英語のWeb版はここをクリックしてください   日本語のWeb版はここをクリックしてください

newsletter banner

2016年7月号

MascotのPeptide Viewページのプロダクトイオンのマッチング状況(スペクトルグラフ中のピークに付けられるイオンシリーズラベルやプロダクトイオン展開表の赤数字)を眺めていると、明らかに存在すると思われるプロダクトイオンピークにラベルが付いていないことがあり、Mascotに裏切られた気分になりますが、Mascotはいつでも素直に意味のあるピークを選択しています。

Mascotを利用した研究論文を紹介しています。取り上げてほしい話題や研究論文がありましたらぜひご紹介ください。また、 Mascotニューズレターの内容に関してお気づきの点やご質問などありましたらご連絡ください。

今月の小技では、検索条件設定画面の「Peptide charge」選択リストの使い方ついてご説明します。

Mascotニューズレターのバックナンバーは このページ からご覧いただけます。日本語版は「Japanese」リンクをクリックしてください。

 

今月のトピックス

なんでラベルがつかないの?
Mascot を利用した論文の紹介
今月の小技
 

なんでラベルがつかないの?

Peptide Viewページで質量スペクトルのマッチング内容を精査すると、明らかにマッチしていると思われる質量ピークであっても、スペクトルグラフではイオンシリーズラベルがついておらず、従ってプロダクトイオン展開表でもその質量ピークは赤色数字になっていません。これはMascotの不具合ではありませんが、本件に関しては時々お問い合わせがありますので、改めてご説明いたします。

ピークリストにはプロダクトイオン由来の質量ピーク以外に、質量領域全体に渡ってケミカルノイズ由来の質量ピークが多数存在しますので、何も考えずに質量ピークを(プリカーサイオン質量にマッチしたペプチド由来の)プロダクトイオン質量にマッピングすると、ひとつのMS2スペクトルに対して有意で高スコアなペプチドが多数マッチすることになり、何を検索しているのかわからなくなってしまいます。シグナルとノイズを区別することが重要ですが、測定サンプル中に含まれるタンパク質の顔が割れていない場合は、その質量ピークがシグナルなのかノイズなのかを明確に区別することができません。

Mascotは次の方法で意味があると思われる質量ピークを選択してスコア計算を行い、偶然のマッチングではないペプチドを探しています。まず、質量領域全体を110Da(20種類のアミノ酸の相加平均質量)の小領域に分割します。次に、最初の110Da領域の中で最も高い質量ピークを選択し、プリカーサイオン質量であらかじめ絞り込んでおいたペプチド群のプロダクトイオン展開表にマッピングし、マッチすればスコアを計算します。同様に、隣の110Da領域、その先の110Da領域でも同様な操作を行い、一巡したら最初の110Da領域に戻り、2番目に高いピークを選択して同様な操作を行い、その都度ピークを加算しながら、選択した質量ピーク群の全体スコアを計算します。この操作の進展に伴いスコアはより高くなりますが、Mascotは「数打てば当たる」効果を考慮していますので、スコア計算対象の質量ピーク数の増加に伴いスコアを下げる補正を施していますので、スコアはいずれは飽和状態になり、さらには減少に転じることになります。Mascotは最も高いスコアが得られる質量ピークの組み合わせを検索結果として強調表示していますが、イオンスコアトップ10ペプチドを閲覧することができます。

なお、デフォルトでは「Label matches used for scoring」に対応したグスペクトルグラフとプロダクトイオン展開表を表示していますが、多数のお客様から要望がありましたので、Mascot 2.3以降のバージョンでは、「Label all possible matches」のラジオボタンを選択すると「何も考えない質量ピークマッピング」状況を表示するようにしました。

さらに詳しい説明は ブログ をご覧ください。

spectrum graphic

Mascotを利用した論文の紹介

Mascotニューズレターで取り上げてほしい話題や研究論文がありましたらぜひご紹介ください。また、Mascotニューズレターの内容に関してお気づきの点やご質問などありましたらご連絡ください。.

 

Bacterial Interactomes: Interacting Protein Partners Share Similar Function and Are Validated in Independent Assays More Frequently Than Previously Reported

Maxim Shatsky, Simon Allen, Barbara L. Gold, Nancy L. Liu, Thomas R. Juba, Sonia A. Reveco, Dwayne A. Elias, Ramadevi Prathapam, Jennifer He, Wenhong Yang, Evelin D. Szakal, Haichuan Liu, Mary E. Singer, Jil T. Geller, Bonita R. Lam, Avneesh Saini, Valentine V. Trotter, Steven C. Hall, Susan J. Fisher, Steven E. Brenner, Swapnil R. Chhabra, Terry C. Hazen, Judy D. Wall, H. Ewa Witkowska, Mark D. Biggin, John-Marc Chandonia, and Gareth Butland

Molecular & Cellular Proteomics (2016)15:1539-1555

The authors conducted an affinity purification-MS survey of the sulfate-reducing bacterium D. vulgaris and also reanalyzed nine yeast-2-hybrid and AP-MS screens for other bacteria. By using more stringent criteria for assessing the quality of protein interactomes, they concluded that the number of bona fide interactions from the earlier screens is limited to hundreds and not the thousands claimed.

The majority of AP samples were analyzed by parallel gelfree and gel-based workflows. In the gel-free approach, AP isolated proteins were digested with trypsin utilizing a 96-well PVDF membrane-based protocol and analyzed by LC MS/MS. Combined with their data analysis strategy they identified 459 high confidence protein-protein interactions for D. vulgaris and 391 from an existing AP-MS dataset for E. coli, many of which are supported by low throughput data from the literature.

Thumbnail from featured publication

今月の小技

通常のピークリストには電荷の値が含まれていますので、Mascotはこの値を使って検索を行います。たとえば、MGFファイルでは各ピークリストの「CHARGE=」行で電荷の値を定義しています。従いまして、Mascot検索条件設定ページの「Peptide charge」選択リストでは、プリカーサイオンの電荷として「8-〜8+」の他に「1+, 2+ and 3+」などを選択することができますが、選択しても、Mascot検索ではこの値を使用しません。ピークリストに書かれた電荷の値を使います。

ピーク抽出ソフトウエアがプリカーサイオンの電荷を決定できないこともありますが、この場合はあらかじめ設定された複数の電荷(例えば1価、2価、3価)を出力しますので、ピークリストにはその値が書かれています。従いましてこの場合もMascotの「Peptide charge」選択リストは使いません。

ソフトウエアによっては、これら3つの電荷に対応するピークリストを独立に出力するものもあります。この場合はひとつのプリカーサ由来のピークリストであっても3つの異なるピークリストとしてMascot検索が行われ、検索結果も3つが独立しています。Mascot Distillerは3つの電荷をカンマで区切って、ひとつのピークリストとして出力し、Mascotは最もスコアが高い電荷に対応する検索結果を表示します。

peptide charge

お問い合せ

マトリックスサイエンス株式会社

〒101-0021 東京都千代田区外神田6-10-12 KNビル3F

info-jp@matrixscience.com

電話:03-5807-7895

ファクシミリ:03-5807-7896

 

Matrix Science logo

Matrix Science Ltd, 64 Baker Street, London W1U 7GB, UK
T +44 (0)20 7486 1050  F +44 (0)20 7224 1344  E info@matrixscience.com
 

View in a web browser Forward to a colleague Unsubscribe