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2017年10月号

スペクトルライブラリを利用して、トリプシンの自己消化物に由来する質量スペクトルを効率的に抽出する方法をご紹介します。

Mascotを利用した研究論文を紹介しています。取り上げてほしい話題や研究論文かありましたらぜひご紹介ください。また、 Mascotニューズレターの内容に関してお気づきの点やご質問などありましたらご連絡ください。

今月の小技では、検索結果のキャッシング処理を無効にする方法についてご説明いたします。

Mascotニューズレターのバックナンバーは このページ からご覧いただけます。日本語版は「Japanese」リンクをクリックしてください。

 

今月のトピックス

トリプシンの自己消化
Mascotを利用した論文の紹介
今月の小技
 

Trypsin here, there and everywhere

Medical University of Grazの研究者が 発表した論文で指摘しているように、プロテオミクス実験で使われるグレードのトリプシンは、自己消化を抑制するために「修飾処理」されていますので、配列データベースの選択が適切ではない場合は擬陽性なヒットが増え、また、対応する修飾設定がなされない場合は自己消化ペプチド由来の質量スペクトルはヒットせずに「unassigned」になります。

実際にGrazの質量データからトリプシン自己消化ペプチドの 抽出を試み ました。検索条件として[Database(s)]は「SwissProt」、[Variable modifications]は「Methyl (N-term), Methyl (K), Dimethyl (K), Dimethyl (N-term), Dehydro (C), Deamidated (NQ)), Carbamidomethyl (N-term) 」の7個、また、Graz論文から非特異的自己消化ペプチドが多数存在することがわかりますので、[Enzyme]は「semiTrypsin」を設定しました。この検索条件はかなり重たい検索に相当します。

1%のFDRの下で、通常の検索([Variable modifications]=「Carbamidomethyl (N-term) 」および[Enzyme]=「Trypsin」)と上記の検索の検索結果を比べると、PSM数では281に対して545、同定された配列では10個に対して49個でした。

日常的なMascot検索において、質量データに含まれるトリプシン自己消化物を検出または分離することを念頭に置き、上記のような検索条件を使って巨大な検索空間を相手にして時間を浪費すのは得策ではありません。

Mascot Server 2.6では、指定した条件にマッチする同定結果を検索結果ファイル群から抽出し、それらをスペクトルライブラリとしてまとめる機能を実装しています。お客様の実験環境の下で得られるトリプシン消化物をスペクトルライブラリとしてまとめておけば、スペクトルライブラリの検索に比べて相当に重い上記のような検索を毎回実行することなしに、質量データからトリプシン消化物由来のスペクトルを除去することができます。詳しくはブログ「 How to create a spectral library for contaminants」をご覧ください。

trypsin structure

Mascotを利用した論文の紹介

Mascotニューズレターで取り上げてほしい話題や研究論文がありましたらぜひご紹介ください。また、Mascotニューズレターの内容に関してお気づきの点やご質問などありましたらご連絡ください。

 

Kinase activity ranking using phosphoproteomics data (KARP) quantifies the contribution of protein kinases to the regulation of cell viability

Edmund H. Wilkes, Pedro Casado, Vinothini Rajeeve and Pedro R. Cutillas

Molecular & Cellular Proteomics, 2017, 16, 1694-1704

The authors set out to develop a model for the contribution of protein kinases to cell viability. Their starting premise is that the fraction of protein phosphorylation attributed to a given kinase relative to total phosphorylation may be a measure of its contribution to signaling.

Using LC/MS/MS datasets of phosphopeptide enriched, digested cell lysates, they developed the algorithm, which calculated the sum of the intensities of its known substrates relative to the sum of the intensities of all phosphorylation sites present in the dataset, producing the K-score.

To investigate whether the K-scores reflected the contribution of kinases to cell viability, and could therefore predict responses to compounds, they measured reductions in cell viability in a panel of cell lines as a function of treatment with nine kinase inhibitors. They found a significant correlation between K-scores of given kinases and reduction of cell viability after their inhibition.

Thumbnail from featured publication

今月の小技

質量データのサイズが大きくなるとそれに比例して検索結果ファイルのサイズが大きくなり、結果としてタンパク質とペプチドの数が増え、それらの帰属関係が複雑になりますので検索結果レポートの作成に時間がかかり、結果表示が遅くなります。特に検索結果を複数回開くような場合はその都度待たされることになり、効率的ではありませんでした。

Mascot Server 2.3では、あらかじめキャッシュファイルを作成することにより結果レポートの読み込みを高速化しました。このキャッシュファイルは、検索結果レポートを初めて表示する際に作成され、2回目以降の同じ結果レポートの表示速度を高速化します(ほぼ一瞬で表示されるようになります)。また、また「Protein View」レポートおよび「Peptide View」レポートの表示も高速化します。

当然のことながら、キャッシュファイルを作成するための「キャッシング処理」は時間がかかります。もし結果レポートを2回以上はめったに開かないとか、「Protein View」レポートや「Peptide View」レポートをめったに見ることがない場合は、このキャッシング処理を無効にすることで最初の結果レポートの表示時間を短くすることができます。

個々の結果レポートのキャッシング処理を無効にするには、URLに「&_usecache=0」を追加してください。

グローバル設定としてキャッシング処理を無効にするには、「mascot.dat」ファイルの「ResfileCache」行と「ResultsCache」行の先頭に「#」を入れてコメントアウトし、これらのキーワードだけを含む行を新たに追加してください。

<#でコメントアウトして無効にする行>
# ResfileCache master_results.pl, master_results_2.pl, peptide_view.pl, protein_view.pl, export_dat.pl, export_dat_2.pl, ms-createpip.exe, MSAnatomiser.class, mi_getpeaklist.pl, msms_gif.pl, nph-mascot.exe, ms-searchcontrol.exe, client.pl
 
# ResultsCache master_results.pl, master_results_2.pl, peptide_view.pl, protein_view.pl, export_dat.pl, export_dat_2.pl, MSAnatomiser.class, mi_getpeaklist.pl, nph-mascot.exe, ms-searchcontrol.exe

 
<新たに追加して有効にする行>
ResfileCache
 
ResultsCache

この変更により、いくつかのスクリプトやユーティリティプログラムによって消費されるメモリ使用量が増加しますので、少なくとも16GBのRAMを確保する必要があります。また、「Protein Family Summary」レポートのタブを切り替えたり、タンパク質ファミリーの表示を展開する場合は表示速度が遅くなります。

Natural cache

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