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2018年2月号

2017年7月号でお伝えした「20種類の暗黒物質」同定クラウドソーシング では多くの方にご参加いただき、いくつかの暗黒物質が明らかになりましたが、多くはまだ未解決であり道半ばです。

「Mascot を利用した論文の紹介」では、アルツハイマー病発症の原因物質のひとつとされるアミロイドβに関連するペプチドバイオマーカーの検出方法を取り上げました。お客様が取り上げてほしい話題や研究論文がありましたらぜひご紹介ください。

今月の小技は、Mascot Distillerの利用効率を上げる最も有効な方法をご説明しています。

Mascotニューズレターのバックナンバーは このページ からご覧いただけます。日本語版は「Japanese」リンクをクリックしてください。また、Mascotニューズレターの内容に関してお気づきの点やご質問などありましたらご連絡ください。

 

今月のトピックス

暗黒物質にもっと光を
Mascotを利用した論文の紹介
今月の小技
 

暗黒物質にもっと光を:経過報告

20種類の暗黒物質」同定クラウドソーシング にご協力いただきましてありがとうございました。これまでに5種類の暗黒物質が解明されました。これまでの 結果 をまとめましたのでご覧ください。

解明第1号は「23.958」のアルミニウムカチオンです。報告したSzaboさんは、Hela細胞の実験プロセスの中でAlが侵入したのではないかと見ています。

解明第2号から5号は主にKまたはRを含むアミノ酸残基ブロックがその正体ですが、次のカラクリによるものでした。Gygiのグループが開発した「Open検索」では「missed cleavages=1」の条件で検索しているために、未切断部位を2つ以上含むペプチドを「未切断部位1を含むペプチド+α」と見なし、αを「mass difference」として出力しています。この場合のαは残りのアミノ酸残基ブロックになりますので、その組み合わせを計算すれば解決します。たとえば、「K.SKLPKPVQDLIK.M」は未切断部位が2つありますので、「SK」残基が「LPKPVQDLIK」のN末端修飾の「215.127」として検出されることになります。

残りの「mass difference」については、解明するのがとても難しいことがあらためてわかりました。LEGOブロックを組み合わせるが如く、「化学部品」を組み合わせて可能な候補を「計算」できるケースもありますが、説得できる化学的根拠が希薄です。例えば、「306.0952」は「2つのヘキソースの付加と水の脱離」による糖化反応と考えると数値は合いますが、これと類似した修飾、たとえば「1つのヘキソースの付加と水の脱離」や「水の脱離がない2つのヘキソース付加」の修飾は報告されていませんので、ちょっと無理があります。実際に、今回の質量データから22個(78PSMs)のヘキソースの修飾ペプチドが検出されています。同様に、「306.0952」修飾ペプチドは766個(2812PSMs)です。C(12)H(18)O(9)の組み合わせは正しいかもしれませんが、2つのヘキソースよりも1つのヘキソースの方が反応生成率が大きい(できやすいとう意味です)と思いますので、22個/766個の比率からして、「306.0952」はヘキソース由来ではないように思います。

今回のクラウドソーシングから未知のデルタを求めることがいかに難しいかがわかりました。5Daよりも大きな未解決物件を「Unknown:302」のような名称で Unimod(表示されたページの[Login as Guest]のリンクをクリックしてください)に登録しました。もしお客が実行したError Tolerant検索でこれらの未解決物件が検出された場合、お客様の知識・経験や実験条件・環境から解決の糸口が見つかるかも知れません。よろしければ考察内容や結果を このブログ または 結果のまとめブログ にコメントしていただけると幸いです。

dark matter

Mascotを利用した論文の紹介

1月31日に『ネイチャー』で公開され、2月1日には様々なメディアで取り上げられました。ひとつリンクを張るとすると・・・個人的にはTBS(のアナウンサー)が好きなのですが、このリンク にしました。Mascotニューズレターで取り上げてほしい話題や研究論文がありましたらぜひご紹介ください。また、Mascotニューズレターの内容に関してお気づきの点やご質問などありましたらご連絡ください。

 

High performance plasma amyloid-β biomarkers for Alzheimer's disease

Akinori Nakamura, Naoki Kaneko, Victor L. Villemagne, Takashi Kato, James Doecke, Vincent Dore, Chris Fowler, Qiao-Xin Li, Ralph Martins, Christopher Rowe, Taisuke Tomita, Katsumi Matsuzaki, Kenji Ishii, Kazunari Ishii, Yutaka Arahata, Shinichi Iwamoto, Kengo Ito, Koichi Tanaka, Colin L. Masters & Katsuhiko Yanagisawa

Nature, Published online: 31 January 2018

In order to move toward a readily available test for early stages of Alzheimer's disease, the authors have identified and validated blood-based biomarkers for amyloid-β proteins. Using immunoprecipitation with MALDI-TOF MS, they were able to establish that the biomarkers in the IP-MS assay were potentially clinically useful candidates as surrogates for brain amyloid-β burden.

Their retrospective cross-sectional study tested these markers in a discovery data set from the Japanese National Center for Geriatrics and Gerontology (121 samples), and was externally validated using an independent data set derived from the Australian Imaging, Biomarker and Lifestyle Study of Ageing (252 samples).

They also looked at the relationships between the plasma biomarkers and two accepted approaches for amyloid-β determination, positron emission tomography and cerebral spinal fluid biomarkers. These results demonstrate that the three different types of Aβ related biomarkers (plasma and CSF Aβ, and PET imaging), are highly correlated with each other, indicating that plasma Aβ biomarkers are strongly linked with the Aβ status of the CNS.

Thumbnail from featured publication

今月の小技

Mascot Distillerは直感的に操作ができるように作られていますので、操作方法や解析の流れを習得するのはそれほど大変ではありませんが、測定データを正しく解析するためには各処理プロセス(ピークの抽出、Mascot検索、定量解析)において適切な処理条件を設定することが必要です。

お客様の測定データは、実験の種類や条件がそれぞれ違いますので、Mascot Distillerにおける設定項目や設定内容もそれに応じて異なりますが、同じような実験系列の測定データに関して「処理条件のデフォルト値」を設定し、必要に応じて設定内容を変更するという使い方ができればデータ処理が楽になります。

どのような設定項目に対してどのような「デフォルト値」設定するかは、チュートリアル形式の書類やヘルプページを読むだけではわからなかったり時間がかかることもあると思いますので、そのような時は Mascotサポート がお手伝いいたします。必要であれば質量データファイルをアップロードしていただき、実際に弊社でMascot Distillerで処理し、お客様ご自身でデータ処理ができるように、適切と思われる設定条件や設定内容などをお返します。

Mascot Distiller

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