2021年1月号

あけましておめでとうございます!

今月のブログでは、先月行われたde novo シーケンシングコンペティションの結果と正解者3名をお知らせします。

今月の論文では、臨床プロテオミクスのための血漿調製を自動化する新しい装置について発表した論文をご紹介します。

今月の小技では、Unimodのクロスリンクに関する修飾定義に関してご案内します。

Mascotニューズレターのバックナンバーはこのページからご覧いただけます。日本語版は「Japanese」リンクをクリックしてください。また、Mascotニューズレターの内容に関してお気づきの点やご質問などありましたらご連絡ください。

De novo sequencing 大会の結果

ペプチド配列の答えは「MERRYCHRISTMAS」でした。修飾として、N末端および6番目のシステインがカルバミドメチル化され、12番目のメチオニンは酸化されています。また、祝祭的な意義は薄れますが質量としては差がない以下のケースも正解といたしました。

  • N末端のCam + M をMGまたはGMとしている
  • 9番目のIの代わりにLとしている

データベース検索でペプチド配列の同定を試みた方は、結果が得られずがっかりした事でしょう。MERRYCHIRISTMASはある人に固有のタンパク質由来の配列で、この人のゲノムの配列は解析されたことはないのでどのデータベースにも存在しません。

2020年10月のブログ記事(英語版日本語版)では、Mascot Distillerの機能を使って denovo sequencingを実行する一般的なアプローチについてご案内しました。今回も同様な方法で対処可能です。しかしながら通常de novoシーケンスのアルゴリズムは2つ以上のvariable修飾を適用させた解答があまりできません。ブログ記事同様、今回も正解を得るためにはフラグメントの許容範囲を通常より狭くし、またカルバミドメチル化をFixed で指定するなど、敢えて本来あるべき設定とは異なる検索条件を適用する必要があります。

12月24日までに寄せられた全正解の中から抽選で選ばれたのは、以下3名です。

  • Gianfranco Mamone, ISA-CNR, Italy
  • Adam Dowle, University of York, UK
  • Guillaume Gabant, CBM-CNRS, France
3名の方々に代わり、WHO COVID-19対応基金にそれぞれ300ドルを寄付いたしました。回答を提出してくださった皆様に感謝を申し上げます。また、このパズルのアイデアは、最近のEUPA/LBMSDGのコンペティションから生まれたものである事も改めてご案内いたします。詳細はブログ記事でも紹介しています。

PepS: 血漿プロテオミクス分析前のベッドサイドでの全血処理を行う革新的なマイクロ流体デバイス

PepS: An Innovative Microfluidic Device for Bedside Whole Blood Processing before Plasma Proteomics Analyses

Benoit Gilquin, Myriam Cubizolles, Remco Den Dulk, Frederic Revol-Cavalier, Manuel Alessio, Charles-Elie Goujon, Camille Echampard, Gorka Arrizabalaga, Annie Adrait, Mathilde Louwagie, Patricia Laurent, Fabrice P. Navarro, Yohann Coute, Marie-Line Cosnier, and Virginie Brun

Analytical Chemistry published online December 15, 2020

著者らは、臨床プロテオミクスにおけるサンプル調製の問題を解決するべく、いくつかのステップをまとめて2時間で自動化処理を行うマイクロ流体デバイスの開発を行いました。このデバイスで、血漿分離とキャリブレーション、定量用の標準物質のスパイク、アルブミン除去、トリプシンによる酵素消化、並びに固相抽出とトリプシンペプチドの安定化がすべて行われます。

また著者らは、ディスカバリープロテオミクスおよびターゲット(定量)プロテオミクスのための前処理としてマニュアル操作とデバイスで自動化されたシステムを比較するため、臨床検査室で日常的に測定されている3つのタンパク質バイオマーカー(アラニンアミノ基転移酵素I、C反応性タンパク質、ミオグロビン)を分析し、デバイスの性能を評価しました。

Mascotニューズレターで取り上げてほしい話題や研究論文がありましたらぜひご紹介ください。また、Mascotニューズレターの内容に関してお気づきの点やご質問などありましたらご連絡ください。

Unimodにおけるクロスリンクの修飾定義

Mascot tip

MASCOTで使用する修飾についてまとめたサイト:Unimod では、クロスリンクに関連する設定はすべてXlink:という接頭辞を付けて命名されています。例えばXlink:DSTといった形です。

MASCOT ver.2.7からはクロスリンクに関連する項目を設定できるよう一部仕様が変更されています。

クロスリンクのリンカーの設定を行う際、可能性があるモノリンクや開裂生成物も一緒に設定をする事ができます。これらの設定は MASCOTにおいて、Configuration Editor の 「Linkers」 の下にまとめられています。

一方Unimod には、ver.2.7でクロスリンク検索が導入される前から存在した、単一のペプチド内部で起こりうる個々のモノリンク、開裂生成物、インタクトなクロスリンクを考慮するためのエントリーも含まれています。これらのエントリーは単純な修飾設定として扱う事ができます。

どちらのタイプのエントリーも、MASCOTのConfiguration Editor の「modification」の中でリスト化してまとめられています。それらのエントリーは前述のunimodと同様、接頭辞 Xlink: がついたエントリーとなっています。linkers以下にまとめられている設定項目なのか、それとも前バージョンでも準備されていたクロスリンク関連だがMASCOTのクロスリンク設定には使われていない修飾設定なのかを判別するためには、「Specificity」タブ内の「classification」設定をご確認ください。分類が「crosslink」としてエントリーされている場合は前者を、それ以外の分類だった場合は後者である事を示しています。

より詳細な情報は、関連するUnimodのヘルプページを参照してください。

お問い合せ

マトリックスサイエンス株式会社

〒110-0015

東京都台東区東上野1-6-10 ARTビル1F

info-jp@matrixscience.com

電話:03-5807-7895

ファクシミリ:03-5807-7896

Matrix Science logo