2022年2月号

今月のブログでは、FTPプロトコルの廃止と新たなダウンロード方法についてご紹介します。

今月の論文は、マラリア原虫におけるヒストンの翻訳後修飾と修飾の組み合わせを定量化するミドルダウン解析法をご紹介します。

今月の小技は、Mascot Distillerのアップデートについてのお知らせです。

Mascotニューズレターのバックナンバーはこのページ(英語版日本語版)からご覧いただけます。また、Mascotニューズレターの内容に関してお気づきの点やご質問などありましたらご連絡ください。

ファイル転送プロトコル(FTP)の廃止

Mascot Server Database Manager によるタンパク質配列データベースのダウンロードにはFile Transfer Protocol (FTP) が使用されてきましたが、50年の歴史を経てこのプロトコルは引退に向かっています。データベースNextProtだけでなく、一般的なブラウザのプラットフォームもFTPをサポートしなくなりました。

FTPの代わりにHTTPS がデフォルトのプロトコルとして使用されるようになってきており、NCBI、EBI、Uniprot などすべての主要なタンパク質配列データベースは FTP と HTTPS の両方が利用可能な状態です(一部のデータベースでは HTTP も可能です)。 HTTPS が FTP に比べて優れている点として、FTP にはないエラー検出機能が組み込まれている事が挙げられます。 ネットワークの信頼性が低かったり、データパケットの到着順序が間違っていたりするなどで転送エラーが発生した場合、接続はエラーで終了してしまいます。しかしその後HTTPS クライアントでは最後に確認された地点からダウンロードを再開することができます。

2021年11月現在、Database Managerでは、SwissProt、contaminants、すべてのESTデータベースのような一般的に使用されるデータベース、およびNCBIからダウンロードされた生物種に関連するファイルに対してHTTP(必要に応じてHTTPS)を使用してファイル取得をしています。 古いバージョンのMascot Serverをお使いの場合は正しくダウンロードするために各種設定変更などが必要なケースがあります。くわしくはこちら(英語版日本語版)をご覧ください。

ダイナミックで多様な組み合わせのヒストンコードがマラリア原虫の無性/有性 の発達を促進する

A dynamic and combinatorial histone code drives malaria parasite asexual and sexual development

Hilde von Gruening, Mariel Coradin, Mariel R. Mendoza, Janette Reader, Simone Sidoli, Benjamin A. Garcia, Lyn-Marie Birkholtz

Molecular & Cellular Proteomics, published online: 17 January 2022

著者らは、さまざまなレベルで協調して作用する翻訳後修飾の性質を理解するために、マラリア原虫Plasmodium falciparumのヒストンコードを解析しました。ペプチド中心のプロテオミクス実験では複数の翻訳後修飾を内包していない短いペプチドが得られることが多いため、著者らはミドルダウン法を採用し、より長いペプチド(解析対象領域)を得て、様々な翻訳後修飾の相対的な量を確認しやすくしました。

著者らはP. falciparumを培養し、栄養生細胞、未熟な初期段階の配偶者細胞、成熟した配偶者細胞をそれぞれ濃縮・分離し、各段階を特徴づける違いについて調べました。 GluCを用いて抽出タンパク質を消化したところ50~60アミノ酸残基の長さのペプチドが得られ、ETDフラグメンテーションとLC-MS/MSで分析をしました。PlasmoDBの登録タンパク質に対して検索を実行後、曖昧にマッピングされた翻訳後修飾の結果を解析対象から除きました。 また、IsoScaleという定量解析プログラムを用いて、同じペプチド配列上で翻訳後修飾の位置が異なる共フラグメント化されたisobaricなペプチドについて、相対的な定量解析を行いました。

解析によってタンパク質 ヒストンH3およびH3.3上の77の翻訳後修飾が同定・定量され、そのうち34が新規のものでした。また細胞ステージ別の翻訳後修飾の組み合わせの影響を解析するため、その共存頻度を「interplay score」として数値化して各ステージ間の比較に利用しました。共存する翻訳後修飾のうち全体の3分の1は3つの発生ステージで同じようなinterplay scoreでしたが、いくつかの翻訳後修飾については寄生虫の特定の成長段階に固有のinterplay scoreの変動パターンを示しました。 例えば、栄養生細胞では大半の翻訳後修飾の組み合わせが負の相互作用スコアを示しており、これは翻訳後修飾が互いに拮抗しており、相互に排他的であることを示唆しています。

Mascotニューズレターで取り上げてほしい話題や研究論文がありましたらぜひご紹介ください。また、Mascotニューズレターの内容に関してお気づきの点やご質問などありましたらご連絡ください。

MASCOT Distiller のアップデート

現在リリースされているMascot Distillerのバージョン2.8.1には、いくつかの重要なバグ修正が含まれています。MASCOT Distillerをお持ちの方にはこのアップデートの適用をお勧めいたします(Distillerのアップデートは無料です。)

以前のバージョンを使用しているにも関わらず、アップデートの促進ダイアログが表示されない場合、アップデートのリマインダーをオフにしているかもしれません。アップデートチェックを再度有効にするには、help メニューから「Check for updates...」を選択し、「Check for updates in the background」のオプションにチェックを入れます。またバージョン2.8では、ドロップダウンリストから適切なupdateのチェック間隔を選択してください。

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