2022年4月号

6月6日、ミネアポリスで開催される恒例のASMSユーザーミーティングにご参加ください。

今月のブログでは、NCBIprot利用時の注意点についてご紹介します。

今月の論文は、PF96(Positive-Presure FASP in96 well format)というサンプル調整の手法に関する研究をご紹介します。

今月の小技は、MASCOT Server ver.2.8.1についてのご案内です。

Mascotニューズレターのバックナンバーはこのページ(英語版日本語版)からご覧いただけます。また、Mascotニューズレターの内容に関してお気づきの点やご質問などありましたらご連絡ください。

マトリックスサイエンス ASMSユーザーミーティング

ミネアポリスで開催されるASMSのブレックファーストミーティングにご参加ください。弊社ソフトウェアに関する最新情報や、Mascotを最大限に活用する方法について発表いたします。

参加費は無料ですが、事前のお申し込みが必要です。参加者の方には朝食をご準備しております。

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6月6日(月)午前7:00~午前8:00

Identification and Quantification of Histone Methylation in Cancer Cells:講演者 Roland Annan氏 (GlaxoSmithKline社)
NCBIprot、mzIdentML 1.2… Mascot Server 2.8.1の改良点:講演者 Ville Koskinen (Matrix Science)
Mascot Distiller 2.8.2によるLFQ:講演者 Patrick Emery (Matrix Science)

 

NCBI nrデータベースを利用するために

NCBIのnrデータベース[NCBIprot]は、非冗長なタンパク質配列の包括的なセットであり、更新も頻繁に行われています。 しかし、その巨大なサイズ(2021年7月現在、ファイルサイズ190GB、4億900万エントリー)により、基本的には最後にとる選択肢とお考えください。 このデータベースを使用する必要がある場合のポイントをご案内します。

  • ハードウェア:データベースの圧縮速度は、ディスクのスループットとランダムアクセス速度に大きく依存します。RAID10アレイまたはデータセンターグレードのNVMeまたはSSDディスクの使用をお勧めします。空き容量としては少なくとも800GBが必要です。
  • データベースを使用可能な状態にする:FASTAファイル設置からMASCOTで使用可能とするまでのプロセスは自動的に実行されますが、どれくらいの時間がかかるかは上述のようにディスクの性能に依存します。 またデータベース構築後のテスト検索がタイムアウトしてしまう場合、mascot.datのオプションにあるMonitorTestTimeoutの値を大きくしてください。
  • 検索:NCBIprotの検索で重要なのは、できる限り生物種選択範囲を限定することです。データベース全体を検索すると、時間がかかるだけでなく、感度(同定ペプチド数)が落ちてしまいます。

NCBIのnr[NCBIprot]をうまく使うためのコツはこちら(英語版日本語版)をご覧ください。なお、FastaをダウンロードするためのPredefined設定のURLがFTPからHTTPSプロトコルに代わったため、ブログ記事中の「ダウンロード」の項目におけるFTPの制限やrsyncの使用についての注意は当てはまらなくなりました。ご注意ください。

プロテオミクス試料調製におけるデータのばらつきゼロを目指して : 96ウェルフォーマットの陽圧FASP(PF96)がもたらすサンプルコホートの高い再現性、時間効率並びにコスト効率の良い解析

Toward Zero Variance in Proteomics Sample Preparation: Positive-Pressure FASP in 96-Well Format (PF96) Enables Highly Reproducible, Time- and Cost-Efficient Analysis of Sample Cohorts

Stefan Loroch, Dominik Kopczynski, Adriana C. Schneider, Cornelia Schumbrutzki, Ingo Feldmann, Eleftherios Panagiotidis, Yvonne Reinders, Roman Sakson, Fiorella A. Solari, Alicia Vening, Frauke Swieringa, Johan W. M. Heemskerk, Maria Grandoch, Thomas Dandekar, and Albert Sickmann

J.Proteome Res.,21 1181-1188 (2022)

著者らは、大規模解析を行う際によくボトルネックとなる、サンプルの前処理の新しい手法、PF96、を開発しました。この手法では96ウェルフォーマットの陽圧式分子量カットオフ(MWCO)フィルター膜と、市販の固相抽出ユニットを併用しています。

まずサンプルを96ウェルプレートに移し、還元・アルキル化した後、96ウェル30kDa MWCOフィルタープレートにロードします。次に陽圧により溶液をフィルターに通し、自動分注によりバッファーを加え、酵素分解を行います。ペプチドはもう一方の96ウェルプレートに回収され、LC-MS分析用の分画サンプルが96ウェルガラスバイアルプレートに移されます。

著者らはHeLa細胞およびマウス心臓組織溶解物のDDA解析を行い、総量3~60 µgのタンパク質をフィルターにロードし解析したところ、優れた再現性を得ました。 さらに48 µgのマウス心臓組織溶解物を40回繰り返し実験を行い、(1) DDAにおけるピアソン相関、(2) ターゲットLC-MSによる16種類の内因性ペプチド(ダイナミックレンジ104レベル)の定量、(3) 同じ16種類の内因性ペプチドに対して、ターゲットLC-MSで安定同位体標識よるリファレンスとの比較による定量、で結果を評価しました。その結果、PF96法はプロテオミクス解析でデータのばらつきを抑えつつ、スループットを5倍向上させる事ができる、と結論付けています。

Mascotニューズレターで取り上げてほしい話題や研究論文がありましたらぜひご紹介ください。また、Mascotニューズレターの内容に関してお気づきの点やご質問などありましたらご連絡ください。

MASCOT Server 2.8.1 リリース

Mascot Server 2.8.1がリリースされました。Windows版、Linux版ともに2.8.0からのアップデートプログラムはサポートページよりダウンロードできます。また日本語の操作手順書はこちらでご案内しています。2.8.1マイナーアップデートにはいくつかの重要なバグ修正と追加設定が含まれています。詳しい内容はサポートページでご覧いただけますが、代表的な改善点をここでご紹介いたします。

  • FASTAファイル内のエントリー数の上限(約4億)を撤廃
  • 非常に大きなFASTAファイルの圧縮を高速化
  • ファイル出力時のmzIdentMLのバージョンが1.2対応に
  • クロスリンク検索におけるSemi-specific切断パターンをサポート
  • 定量 : TMTpro 18plexを追加
  • Instrument : EADを追加

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