2022年5月号

6月6日(月)にASMSで開催される恒例のユーザーミーティングにご参加ください。

今月のブログは、MASCOT Distillerのピークピッキング処理オプションについてのご紹介です。

今月の論文は、MASCOTのクロスリンク検索をタンパク質複合体の解析に利用している研究についてのご紹介です。

今月の小技は、Unimodの糖鎖エントリーについてのご案内です。

Mascotニューズレターのバックナンバーはこのページ(英語版日本語版)からご覧いただけます。また、Mascotニューズレターの内容に関してお気づきの点やご質問などありましたらご連絡ください。

マトリックスサイエンス ASMSユーザーミーティング

ミネアポリスで開催されるASMSのブレックファーストミーティングにご参加ください。弊社ソフトウェアに関する最新情報や、Mascotを最大限に活用する方法について発表いたします。

参加費は無料ですが、事前のお申し込みが必要です。参加者の方には朝食をご準備しております。

Register here

6月6日(月)午前7:00~午前8:00

Identification and Quantification of Histone Methylation in Cancer Cells:講演者 Roland Annan氏 (GlaxoSmithKline社)
NCBIprot、mzIdentML 1.2… Mascot Server 2.8.1の改良点:講演者 Ville Koskinen (Matrix Science)
Mascot Distiller 2.8.2によるLFQ:講演者 Patrick Emery (Matrix Science)

MASCOT Distillerにおけるピーク抽出の設定オプション

Mascot Distillerには、各質量分析装置ベンダーのRAWファイルに対して適切なピーク抽出処理を行うための処理オプションが多数用意されています。これらは出発点として適切な選択肢ではありますが、気になる点についてカスタマイズをしてさらに最適化することもできます。 ここでは、Thermofisher社のデータを処理するための2つの設定ファイル、”default”と”prof_prof”について検討します。

どちらの場合もMSスキャンのピーク検出にはプロファイルデータを扱う事を前提とした選択肢が選ばれています。ラベルフリー、SILACなどのサーベイスキャンに基づく定量解析を実行したい場合に必要な要件でもあります。

2つの処理オプションの主な違いはMS/MSデータがセントロイドデータである時の扱いです。、"default "設定では、MS/MSスキャンに含まれるピークのセントロイド値をそのまま受け入れるのに対し、"prof_prof "設定ではセントロイドデータを「uncentroid」、すなわちセントロイドデータから疑似的なprofileデータを再構成してからピーク抽出処理を実行します。Uncentroidの実行により、de novoシーケンスなどに必要なフラグメントイオンの電荷状態を詳しく計算したり、トップダウンやミドルダウンの実験を行う場合に重要なピークリストの「decharge」、すなわち電荷が1価な場合にとるピーク位置への変換をしたりする事が可能になります。

一般的なガイドラインとして、MS/MSスキャンがプロファイルデータとして保存されている場合、ピークピッキングの出発点として「prof_prof」設定を使用してください。 "default "設定とあまり変わらない計算時間で、より多くの有用な情報を得ることができます。 一方MS/MSスキャンデータがセントロイドデータで保存されていた場合、"default" 処理オプションを選んでください。結果の質をあまり落とすことなく、計算時間を短縮できます。

ピーク抽出のオプションに関する推奨事項はこちら(英語版日本語版)へ。

アンドロゲン受容体の二量体形成と活性化を促進するアロステリック相互作用

Allosteric interactions prime androgen receptor dimerization and activation

Elizabeth V. Wasmuth, Arnaud Vanden Broeck, Justin R. LaClair, Elizabeth A. Hoover, Kayla E. Lawrence, Navid Paknejad, Kyrie Pappas, Doreen Matthies, Biran Wang, Weiran Feng, Philip A.Watson, John C. Zinder, Wouter R. Karthaus, M. Jason de la Cruz, Richard K. Hite, Katia Manova-Todorova, Zhiheng Yu, Susan T. Weintraub, Sebastian Klinge, and Charles L. Sawyers

Molecular Cell,82 1-11 (2022)

アンドロゲン受容体(AR)は遺伝子発現を制御する核内受容体で、活性の異常化は前立腺癌やアンドロゲン不応症などの病態を引き起こす可能性があります。 ARは、構造・機能的に無秩序なN末端ドメイン、DNA結合ドメイン(DBD)、柔軟性をもたらすヒンジ部、リガンド結合ドメイン(LBD)から構成されています。 著者らは分子内外での様々な相互作用がもたらすARのシグナル伝達制御の解明を目的としています。

著者らはタンパク質のクロスリンク解析を駆使して、ARの活性に影響を及ぼす分子的特徴を明らかにしました。ARの複合体は、AR、腫瘍性タンパク質ERG、ARE(Androgen Response Elements,DNAのアンドロゲン受容体結合配列)を組み合わせて生成しました。 この複合体をジスクシンイミジルスルホキシド(DSSO)で1時間架橋し反応停止後、超遠心分離で分離しました。 この複合体をさらにSDS-PAGEで分離し、切り出し、消化酵素処理した後、LC-MS/MSで分析しました。サンプル検索にはDSSOのMascotのクロスリンク検索機能を使用し、解析結果をxiViewに取り込んで架橋部位を可視化しました。

最も高いスコアを示したクロスリンクは、ARのDBDとLBDの間の界面であり、著者らのドメインドッキングと構造観察を裏付けるものでした。 さらに、DBDにある2つの架橋リジンは「レバーアーム」の一部を構成しており、その柔軟性によってドメイン間のアロステリックな相互作用を仲介していると考えられます。

Mascotニューズレターで取り上げてほしい話題や研究論文がありましたらぜひご紹介ください。また、Mascotニューズレターの内容に関してお気づきの点やご質問などありましたらご連絡ください。

Uniprotに登録されている糖のエントリー

糖ペプチド解析は簡単ではありません。多くの糖は大きく、対称性のない構造をしています。CID や HCDでは、糖鎖がペプチドの代わりに断片化してしまいます。その結果ペプチドからの配列イオンが弱く、糖鎖がついたピークを探すのが難しくなって、アミノ酸と結合していた部位の解析が難しくなります。一方ETDでは糖鎖がそのまま保持されるため、より好ましい手法と言えます。

Unimodには現在450もの糖のエントリーがありますが、これらはヒトタンパク質に見られる質量2 kDa以下の天然に存在するN-結合型およびO-結合型糖鎖をすべてカバーする事を意図して準備されたものです。O-結合型糖鎖の S および T と結合する設定は単一の修飾として選択できるようグループ化されています。またETD、CID / HCD どちらの解析にも適用できるよう、通常設定とNeutral Lossで糖の部位すべてが抜けるパターンの両方に対応する設定がなされています。

上記設定は糖ペプチドに興味がある場合を想定しており、興味がある分には非常に便利といえます。しかしそれほど興味がない場合、Error Tolerant 検索において多数の糖修飾設定すべてが対象となる事で、結果解釈が複雑になり検索速度の低下にも繋がっている事に注意してください。もし、2000Da以下の糖の解析にあまりが興味ない場合、準備されている糖鎖の修飾パターンをError Tolerant検索では考慮しないよう設定変更する事により、検索を高速化したり、結果解釈を簡単にさせる事ができます。Error Tolerant検索において特定の修飾を解析対象から外す方法については、以前のニュースレター(日本語英語)で説明しています。

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