2025年5月号 (#126)

今月のお知らせは、6月2日にアメリカメリーランド州ボルチモアで開催されるASMS 2025のMatrix Scienceユーザーミーティングについてです。皆様ぜひご参加ください。また、ASMSでMascotを使用したポスター発表または講演をなされる方は、ポスター番号/講演番号、発表者名、要旨をnewsletter@matrixscience.comまでお送りください。今後のニュースレターでご紹介させていただきます。

今月の論文は、馬の酸素代謝を加速するオパール型ストップコドンについてです。

今月のブログは、大規模なデータにおけるMASCOT検索についてです

Mascotニューズレターのバックナンバーはこのページ(英語版日本語版)からご覧いただけます。ご一読の上、ご意見・ご質問等ございましたら、お気軽にお問い合わせください。

Matrix Science ASMSユーザーミーティング

6月2日にメリーランド州ボルチモアで開催されるASMSユーザーミーティングにぜひご参加ください。

参加費は無料ですが事前登録が必要です。定員に達し次第締め切らせていただきますので、お早めにお申し込みください。朝食が提供されます。

Monday 2 June, 7:00 am – 8:00 am
Room 338, Baltimore Convention Center, Baltimore, MD

  • Using MS2Rescore to boost identification rates in complex samples,
    Tim Van Den Bossche, Computational Omics and Systems Biology Group (CompOmics), Ghent University/VIB-UGent Center for Medical Biotechnology

  • Mascot DIA: Universal spectrum-centric approach,
    Ville Koskinen, Matrix Science

  • Mascot DIA: Thermo LFQ example,
    Patrick Emery, Matrix Science

Register now

遺伝的な停止信号を走り抜け、馬の酸素代謝とエネルギー産生が加速される

Running a genetic stop sign accelerates oxygen metabolism and energy production in horses

Gianni M. Castiglione, Xin Chen, Zhenhua Xu, Nadir H. Dbouk, Anamika A. Bose, David Carmona-Berrio, Emiliana E. Chi, Lingli Zhou, Tatiana N. Boronina, Robert N. Cole, Shirley Wu, Abby D. Liu, Thalia D. Liu, Haining Lu, Ted Kalbfleisch, David Rinker, Antonis Rokas, Kyla Ortved, Elia J. Duh

Science 387, 1375 (2025)

馬は酸素消費量(質量比)が異常に高く、高エネルギー生産を支えるその他の代謝適応能力も非常に優れています。著者らはこれらの分子メカニズム、特に NRF2/KEAP1 経路について研究を行いました。NRF2 は運動中の細胞および組織の酸化還元反応を調節し、KEAP1 は NRF2 の主要な負の調節因子です。著者らは、馬および他のウマ科動物ではKEAP1遺伝子に早期終止コドン(R15X)があることを突き止めました。しかもこの変異箇所では、変異により新たに発生したオパールストップコドン(UGA)であるにも関わらず、システインがコードされています(C15)。R15C KEAP1変異はNRF2活性を増強し、酸素代謝とATP産生を促進しています。

この現象を解明するため、著者らはまず馬の組織と細胞をLC-MS/MSで分析しました。KEAP1は濃縮され、測定はDDA解析を行いました。KEAP1構築体を含むEquus caballusタンパク質配列データベースを準備し、Mascot Serverで検索しました。ヒトとマウスにおいてUGAストップコドンがセレンシステインまたはシステインにコードされるケースが知られているため、著者らは検索時にシステインがセレンシステインやカルバミドメチル化されるケースを考慮しました。その結果、馬のKEAP1の15番目のアミノ酸は主に通常のシステインとして存在している事がわかりました。そして構造生物学、細胞アッセイ、比較メタボロミクスを用いて、システイン変異の代謝下流への影響についても併せて解明しています。

Mascotニューズレターで取り上げてほしい話題や研究論文がありましたらぜひご紹介ください。また、Mascotニューズレターの内容に関してお気づきの点やご質問などありましたらご連絡ください。

大規模なデータベースとピークリスト

Illustration for Mascot

MASCOT検索はどの程度の規模まで可能なのか?これには大きく分けると2つの着目ポイントがあります。データベースに登録されているエントリー数と、検索クエリーのピークリストの数です。

Mascot Server側にはソフトウェアの設計上の制限はありません。配列データベースの大きさという面でみると、MascotはRAMに多くのデータを保持する必要もなく処理します。ハードウェアで比較的問題になりやすい制限はディスク容量です。それでも大体のケースでは問題になることはなく、例えばNCBI nrデータベース(約7億700万エントリ)であっても容易に処理することが可能です。

一方大規模なピークリストファイルの場合も、Mascot Serverには制限はありません。入力データを独立した小単位に分割してから処理を行うため、検索可能なデータ数に制限はありません。ウェブサーバーの仕様という点で、大規模検索に対する別の面での制限にひっかかってしまう可能性があります。主な問題は(Microsoft IISとApache httpdにおいて)、ファイルアップロードサイズ制限で、通常2GBまたは4GBです。2GBのMGFファイルに100万件のMS/MSスペクトルを格納できるため、非常に長い勾配や非常に高速な機器の場合に問題となります。この件の詳しい内容については、ブログ記事(英語版日本語版)をご覧ください。

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