ASMSにおいて弊社は毎年ユーザーミーティングを開催しています。今年はゲストスピーカーによる講演1件と、弊社による2件のプレゼンテーションが行われました。

Using MS²Rescore to boost identification rates in complex samples.

（訳:複雑なサンプルにMS²Rescoreを適用して同定率を向上させる）

Tim Van Den Bossche先生 (Ghent University/VIB-UGent Center for Medical Biotechnology)

MS²Rescoreの動作原理、並びに機械学習を活用した再スコアリングの有用性についてご発表されました。

Mascot DIA: Universal spectrum-centric approach.

（訳: Mascot DIA：ユニバーサルスペクトル中心アプローチ)

Ville Koskinen（Matrix Science）

次期バージョンリリースで対応予定のDIAデータ解析について、サポート予定の内容を紹介いたしました。

Mascot DIA: Thermo LFQ example.

（訳: Mascot DIA：Thermo LFQデータ解析例)

Patrick Emery (Matrix Science)

次期バージョンリリース予定であるMascot Server 3.2（ベータ版）とMascot Distiller 3.0（ベータ版）を使用して、Thermo Orbitrap DIAプロジェクトデータに対する予備分析結果を紹介いたしました。

Mascotを利用してタンパク質の同定、定量、または特性評価を行った、興味深いASMS発表を一部ご紹介します。学会では毎日数百件のポスターが発表されるため、残念ながらすべてのMascot関連ポスターをここに掲載することはできません。

MP 282 Species identification of the DNA-degraded blood drop in the complex matrices by nanoLC-MS/MS

Katarzyna Staniszewska, Malgorzata Hopcias, Paulina Kret, Piotr Suder

解析が困難な素材に付着した古い微小な血痕から分類学的に由来を特定することに成功しました（DNAが完全に分解・汚染されているようなケースであっても）。

TP 135 Quantitative Proteomics of Silva Patterns and the Tumor Microenvironment in Cervical Adenocarcinomas

Jonathan Ogata, Sarah M. Drayer, Sean Cronin, Jordyn Tumas, Saeid Movahedi-Lankarani, Tamara Abulez, Kelly A. Conrads, Brian L. Hood, Jordan Driscoll, Kathleen M. Darcy, Christopher M. Tarney, G. Larry Maxwell, Thomas P. Conrads, Nicholas W. Bateman, Neil T. Phippen

定量プロテオミクスにより、子宮頸部腺がんの進行性のSilva Cパターン亜型に特有の、腫瘍および間質のタンパク質変化が明らかになりました。

WP 675 Identification and quantification of 4-HNE-adducted proteins to study the metabolic disorders of the ALDH2 gene mutation

Fu-An Li, Ling Hui Wang

ALDH2の変異は、4-HNEの付加によって褐色脂肪組織（BAT）の機能を損ないエネルギー消費の低下と食事誘発性肥満を引き起こしますが、ALDH2活性化剤によりその影響が可逆的であることが示されました。

WP 176 Evaluation of antioxidant properties, untargeted metabolomics profiling and protein identification using Liquid Chromatography-Mass Spectrometry (LC-MS) across various Thai rice varieties

Jaruwan Chimasangkanan, Worakrit Saiyasombat, Wimonphan Chathiran, Pattaraporn Morasin, Warangkana Srichamnong

本研究は、発芽および非発芽の条件下において、有色米（赤・紫・黒）および無色米のメタボロームプロファイルを比較検討することを目的としています。さらに、FRAP法、DPPH法、総抗酸化能キットを用いて抗酸化特性を評価し、あわせて発芽米におけるタンパク質の発現パターンと同定についても解析を行っています。

ThP 097 Monitoring the estrogen-inducible proteins in Lake trout (Salvelinus namaycush) from Great Lakes upon exposure to environmental contaminants

Taniya Modhishika Jayaweera, Krishan S Weraduwage, Bernard Crimmins, Sujan Fernando, Thomas M Holsen, Costel C. Darie

本プロジェクトの主な目的は、五大湖地域における環境汚染物質への曝露に伴って、ヒメマス（Salvelinus namaycush）およびウォールアイ（Sander vitreus）の肝臓に特異的な発現をするタンパク質をモニタリングすることです。魚類における内分泌かく乱化合物（EDCs：Estrogenic Disrupting Compounds）の影響を評価する方法はこれまで存在しておらず、本研究がその初の試みとなります。

弊社はASMSポスターセッションで2つのポスターを発表しました。PDFは、当社のウェブサイトから無料でダウンロード可能です。

TP 505: Customizable machine learning adapter improves LFQ in Mascot Distiller.

Mascot Distiller におけるラベルフリー定量について、機械学習によって結果の精度を高めることが可能です。そのワークフローについて、ベンチマークのDDAラベルフリー定量（LFQ）データセットを用いて示しています。

ThP 265: Machine learning-enabled Mascot Server API improves LFQ in client software like Thermo Proteome Discoverer.

Mascot Serverは、Thermo Proteome Discovererなどの他のソフトウェアにrefinement後の検索結果を渡すことが可能です。機械学習を用いることでラベルフリー定量の精度と正確性は高まり、同時に定量されたタンパク質の数も大幅に増加します。