2026年8月号 (#141)

今月のブログは、AIコーディングアシスタントとMascot Parserスキルについてです。

今月の論文は、タンパク質のN末端誘導体化のための代替手法を比較した研究です。

今月のお知らせは、Mascotの新しいハードウェアへの移行についてです。

Mascotニューズレターのバックナンバーはこのページ(英語版日本語版)からご覧いただけます。ご一読の上、ご意見・ご質問等ございましたら、お気軽にお問い合わせください。

コーディングアシスタント向け Mascot Parser スキル

AIコーディングアシスタントを活用すると、カスタムソフトウェアの開発をより迅速に進めることができます。このたび、LLM(大規模言語モデル)向けにコーディングスキルの提供を開始しました。このスキルは、Mascot Serverとの連携やMascot検索結果の読み込みを行うためのAPIツールキットであるMascot Parserの利用方法をAIコーディングアシスタントに教えます。これにより、コーディングアシスタントは、データ処理の自動化、データマイニング、さらにはカスタムレポートの作成といった作業を支援できるようになります。サンプルスキルは当社のGitHubリポジトリからダウンロードでき、さまざまなAIコーディングアシスタントで利用可能です。

Mascot Server および Mascot Daemon には、ユーザー独自のスクリプトを実行できるフック(hook)がいくつか用意されています。 代表的な利用例として、検索完了後にスクリプトを自動実行し、その検索結果からカスタムレポートを生成することが挙げられます。この機能のデモとして、私たちは Anthropic Claude にこのスキルを導入し、「保持時間(Retention Time)と m/z、さらに同定率を表示する2次元プロットを作成するスクリプトを書いてほしい」と指示しました。指示内容を数回調整した結果、品質管理(QC)に利用できるPythonスクリプトが完成しました。このスクリプトは、コマンドラインから実行することも、Mascot Daemon の "After Each Search" フックを利用して検索終了後に自動実行することもできます。

コーディングスキル、LLMとのやり取りの概要、およびQC用サンプルスクリプトについては、詳しい内容はこちらのブログ記事(英語版日本語版)をご覧ください。

ニコチン酸誘導体化とMS解析によるタンパク質N末端配列解析

N-Terminal protein sequencing by nicotinic acid derivatization and MS analysis

Peter Gehrig、Simone Wüthrich、Serge Chesnov、Ralph Schlapbach、Paolo Nanni

Anal Bioanal Chem (2026), doi:10.1007/s00216-026-06727-4

1つの遺伝子から、異なるN末端をもつ複数の成熟プロテオフォームが生じることがあります。その要因として、開始メチオニンの除去、シグナルペプチドやプロペプチドの切断、アミノペプチダーゼによるトリミング、RNAスプライシング、あるいは翻訳後修飾などが挙げられます。MSによるN末端配列解析ワークフローでは、N末端アミノ基、そして多くの場合はリジン側鎖のアミノ基を化学的に誘導体化することが重要な工程となります。従来その方法として、ホルムアルデヒドと還元剤であるシアノ水素化ホウ素ナトリウムを用いたジメチル化法が広く利用されてきました。しかし、この方法はさまざまな副反応が生じてしまうことが報告されており、さらにホルムアルデヒドとシアノ水素化ホウ素ナトリウムはいずれも有害な化学物質です。

この最新の研究では、タンパク質N末端修飾のための代替試薬が検討されました。著者らは、従来法である還元的ジメチル化法(シアノ水素化ホウ素ナトリウムの代わりにピリジンボランを使用)に加え、RapiFluor、2-ピリジンカルボキシアルデヒド、TMT試薬、およびニコチン酸NHSエステルなど、複数の化学標識法を比較しました。各手法について、標識効率、選択性、質量分析における感度、および望ましくない副反応の有無を評価しました。

DDA LC-MS/MS解析後、rawデータはProteome Discoverer 2.1で処理され、試料に応じてウシ、ウマ、または大腸菌のUniProtタンパク質データベースを用い、Mascot Server 3.0で検索を行いました。その後、Percolatorによる再スコアリングを実施し、偽発見率(FDR)1%を適用することで、各誘導体化法を比較しました。その結果、評価した手法の中では、ニコチン酸N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステルが特に優れた性能を示しました。この試薬は十分に高い標識収率と良好なMS/MSスペクトルを与え、さまざまな試験用タンパク質からN末端ペプチドを効率よく同定することができました。

新しいハードウェアへの移行方法

今年はRAMモジュールやNVMeストレージの価格が大幅に上昇しており、新しいコンピュータの購入は容易ではありません。しかし、使用中のPCが寿命を迎えたり、突然故障したりして、新しいシステムへの移行が必要になることもあります。そのような場合、ソフトウェアやデータを新しい環境へどのように移行すればよいのでしょうか。

当社では、Mascot Server、Mascot Distiller、および Mascot Daemon の移行に必要なバックアップ項目と復元手順について、詳細な手順書をご用意しています。移行の最初のステップとしてまずは,新しいハードウェア用の一時的な製品キーをご希望の旨をご連絡ください。サポート契約が有効な場合は、Windows、Linux を問わず、お好きな環境へライセンスを自由に移行できます。サポート契約が終了している場合でも、同じOS間(WindowsからWindows、またはLinuxからLinux)であれば、新しいハードウェアへライセンスを移行できます。また、最適なPC構成やオペレーティングシステムの互換性についても、お気軽にご相談ください。

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