今月のブログは、EUサイバーレジリエンス法(Cyber Resilience Act:CRA)についてです。
今月の論文は、シングルドメイン抗体-キレート剤コンジュゲートの開発適性に関する研究です。
今月の小技は、Mascotのロールベースのアクセス管理システムについてです。
Mascotニューズレターのバックナンバーはこのページ(英語版、日本語版)からご覧いただけます。ご一読の上、ご意見・ご質問等ございましたら、お気軽にお問い合わせください。
Cyber Resilience Act(CRA:サイバーレジリエンス法) は、プロテオミクス関連ツールを含め、EU域内で販売されるすべてのデジタル製品のサイバーセキュリティ向上を目的としたEU規則です。この規則の対象となるのはエンドユーザーではなく、企業や製造事業者です。また、企業の所在地にかかわらず、その製品がEU域内で販売される場合には対象となります。これに関連する重要な日付が2つあります。適用の第1段階として、報告義務が2026年9月11日から開始されること、そして第2段階として、2027年12月11日から本格的なルールの適用が開始されること、です。
Mascot製品をご利用の皆様は、現段階で何か特別な対応をする必要はありません。第1段階では、ソフトウェア製品において実際に悪用されている脆弱性について、EU全体で情報を共有するための報告制度が導入されます。ここでいう「実際に悪用されている脆弱性」とは、「システム所有者の許可なく、悪意のある第三者によってその脆弱性が実際に悪用されたことを示す、信頼できる証拠が存在するもの」を意味します。
弊社ではこの第一段階の対応として、2026年9月より弊社では正式な脆弱性報告手順を運用しています。Mascot Server、Mascot Distiller、またはMascot Daemonにおいて、実際に悪用されている脆弱性を発見した、あるいはその情報を入手した場合は、速やかに当社までご報告ください。当社ではまず脆弱性の重大度を評価し、違法または悪意のある第三者による攻撃であることを示す明確な証拠がある場合には、EU当局へ報告するとともに、影響を受けるユーザーへ緩和策をご案内します。
2027年12月以降、Mascot Server、Mascot Daemon、Mascot Distillerの各製品リリースには、規則で要求されるサイバーセキュリティリスク評価書、EU適合宣言書、ソフトウェア部品表(SBOM:Software Bill of Materials)、関連する技術図面および技術文書、という4つ文書が添付される予定です。弊社ではこの規制対応を、皆様により良い製品を提供するための機会と捉えています。
Mascot製品を安全に運用するための簡単な対策を含む詳しい内容はこちらのブログ記事(英語版、日本語版)をご覧ください。
Philipp D. Kaiser, Simon Straß, Sandra Maier, Evgenia Herbold, Bjoern Traenkle, Anne Zeck
Antibodies 2026, 15(2), 22, doi:10.3390/antib15020022
抗体医薬の開発では、開発適性(developability)を評価するための体系的な手法を用いることで、開発上のリスクを低減することができます。著者らは、既存の評価手法をシングルドメイン抗体(single-domain antibody:sdAb)にそのまま適用することは難しいと指摘しています。その理由として、sdAbは通常の抗体に比べて分子サイズが小さいこと、表面電荷の分布が異なること、そしてFc領域を持たないことを挙げています。そこで著者らはsdAbおよびそのコンジュゲートの開発適性を評価するための手法を構築しました。
このケーススタディでは、臨床イメージングに使用する診断用トレーサーを製造するための前駆体として開発されている、2種類の臨床候補化合物を評価しました。著者らは、さまざまな分析法を組み合わせて、1.抗体フレームワークの完全性および相補性決定領域(CDR: complementarity-determining regions)の安定性:インタクトマスLC-MS解析、並びにトリプシン消化ペプチドマッピングによる相対定量、2.構造的完全性(NanoDSF, :nano differential scanning fluorimetry)、3.抗原結合能:サイズ排除クロマトグラフィー-紫外吸収検出(SEC-UV, size-exclusion chromatography—ultraviolet light detection)、4.キレート形成能:LC-MS/MSを用いたキレーションアッセイ、の4点を評価しています。
ペプチドマッピングでは、ストレス処理した試料とリファレンス試料をトリプシン消化した後、LC-MS/MS(Thermo Orbitrap Eclipse、DDAモード)で解析しました。著者らは、sdAbの配列を含む独自のタンパク質データベースを使用し、Mascot Server 3.0でペプチドを同定しました。非常に短いペプチドも同定できるよう、最小ペプチド長を4残基に設定し、さらにMascotのError Tolerant Search(二段階検索)を使用しました。Error Tolerant Searchでは、半特異的(semi-specific)なペプチド配列や予期しない修飾についても検索できます。修飾については、さらにThermo BioPharmaFinderを用いて定量解析を行っています。例えばsdAb候補の1つでは、CDRに局在した顕著な不安定性が認められ、フラグメントイオンスペクトルによってスクシンイミド形成(succinimide formation)が確認されました。
Mascot Serverには、Mascot Security と呼ばれるロールベースのアクセス管理システムが搭載されています。これを有効にすると、ユーザーまたはグループごとに、データベース検索やConfiguration Editorへのアクセスを制限できます。デフォルトの認証方式は基本的なパスワードログインですが、セキュリティ面ではそれほど強固ではありません。そのため、Webサーバー(Microsoft IISまたはApache)が提供するHTTP認証を利用することをお勧めします。HTTP認証は、Mascot Securityのユーザーデータベースと連携させることができます。
以下のページMascot Security: password protected administration では、設定ファイルへのアクセスを制限する方法を説明しています。
またこちらのページ、Single sign-on (SSO) and Mascot では、WebサーバーのSSO連携機能をMascotで利用する方法を説明しています。
そして、こちらのページ Mascot Security: privacy settings では、データベース検索結果を特定のユーザーまたはグループだけが閲覧できるようにする方法を説明しています。
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