今月のブログは、AIコーディングアシスタント向けの Mascot Distillerスキル についてです。
今月の論文は、X連鎖性CMTにおけるSOX3発現異常に関する研究です。
今月の小技は、新しくなりFASTAファイルが得やすくなったNCBI Taxonomyについてです。
Mascotニューズレターのバックナンバーはこのページ(英語版、日本語版)からご覧いただけます。ご一読の上、ご意見・ご質問等ございましたら、お気軽にお問い合わせください。
AIコーディングアシスタントを活用することで、カスタムソフトウェアの開発をより迅速に進めることができます。最近公開したLLM向けの Mascot Parserコーディングスキル に加えて、このたび Mascot Distiller向けのスキル も提供を開始しました。これにより、コーディングエージェントに指示して、独自の定量レポートやエクスポート形式を作成できるようになります。
Mascot Distiller は、Mascotによるデータベース検索を利用してタンパク質の同定および定量を行う、装置メーカーに依存しないアプリケーションです。一般的な用途を幅広くカバーする各種レポートが標準で用意されていますが、あらゆる用途に対応するレポートをあらかじめ収録することはできません。そのためDistillerには、Pythonプログラミング言語を用いてカスタムレポートを作成できる拡張可能なフレームワークが用意されています。
当社ブログ記事(英語版、日本語版)のチュートリアルでは、レポート作成の手順をステップごとに解説しています。この例では、Mascot Distillerスキルを利用するLLMコーディングエージェントを使って、新しい MSstats用レポートを開発しています。MSstats は、プロテオミクス実験におけるグループ間比較、時系列解析、対応のあるサンプル、さらに複雑な実験デザインなどに対応した、十分に確立された統計解析フレームワークです。
何度か修正とテストを繰り返した後、MSstatsで使用するCSVファイルを生成する新しいPythonスクリプトが完成しました。このスクリプトは当社の GitHubリポジトリで公開しているため、同じものを一から作り直すために余分なトークンを消費する必要はありません。同じリポジトリには、コーディングエージェントとのセッションのやり取りを記録したトランスクリプトへのリンクも掲載されています。
Alexandra Boyling, Anthony N. Cutrupi, Desmond Li, Ben Crossett, Jonathan J. Danon, Edward D. Harvey-Latham, Garth A. Nicholson, Steve Vucic, Marina L. Kennerson
Human Mutation, 2026,2026:4225263, doi:10.1155/humu/4225263
Charcot–Marie–Tooth(CMT)ニューロパチーは、臨床的に多様な疾患群であり、進行性の遠位筋力低下および筋萎縮、感覚障害、さらに症例によって程度の異なる中枢神経系の障害を引き起こします。CMTX3 は、X連鎖性CMTの希少型であり、その原因遺伝子座については著者らが以前の研究でマッピングしています。本研究では、患者由来の人工多能性幹細胞(iPSC)株を用いて、神経分化のさまざまな段階におけるCMTX3をモデル化しました。
患者由来の脊髄運動ニューロン(spinal Motor Neurons, sMNs)についてバルクRNAシーケンシングを行い、その後、NanoString nCounterを用いて局所的な遺伝子発現制御を標的解析しました。
その結果、SOX3 が、CMTX3におけるsMN分化過程で、時空間的に最も顕著な発現異常を示す遺伝子候補として示されました。CMTX3患者由来の神経上皮細胞(NeuroEPithelial cells, NEP)では、SOX3の発現低下が、LC-MS/MSを用いたプロテオミクス解析によって確認されました。3名の患者と3名の対照者から得られたiPSCを回収し、消化後にTMT6plexで標識し、Thermo Orbitrap Eclipseを用いてDDAモードで解析しました。得られたスペクトルはProteome Discovererで処理し、Mascot Server 3.1を用いて検索しました。この解析には、予測フラグメント強度を利用した再スコアリング(MS2PIPモデル HCD2019)も含まれています。タンパク質の発現量差解析はRStudioで実施しました。重複した特徴量を除去し、さらにすべての試料で同定されなかったタンパク質ヒットを除外した結果、著者らは1試料あたり約8,000種類のタンパク質を定量することができました。このうち、23種類のタンパク質がCMTX3群と対照群のNEPの間で有意に変動していました。そして、CMTX3の連鎖領域内にコードされているタンパク質の中で、有意な存在量変化を示したのはSOX3だけでした。
2026年10月、NCBIでは従来のTaxonomy Browser(www.ncbi.nlm.nih.gov/Taxonomy/Browser/wwwtax.cgi)を、新しい NCBI Taxonomy に置き換えています。新しいサイトでは、Taxonomy Browser、Common Tree、Taxonomy name check ツールなどが新たに設計されています。
NCBI Taxonomy は、NIHの Comparative Genomics Resource(CGR)Toolkit の一部である NCBI Datasets と連携しています。これにより、タンパク質配列のFASTAファイルを検索してダウンロードする作業が、これまでより非常に簡単になりました。NCBIのデータベースは非常に網羅的で、UniProtでは必ずしも収録されていない生物種や株(strain)も含まれています。
例えば、Helicobacter pylori を検索してみます。リファレンスゲノムに加えて、NCBIには異なる株や分離株(isolate)について、9,000を超えるゲノムが登録されています。目的のゲノムアセンブリへのリンクを開き、Download をクリック→File source:All→File type:Protein (FASTA)、と選択します。
こうしてダウンロードしたFASTAファイルは、Mascot Serverで検索に使用できます。設定方法については、オンラインヘルプおよび YouTubeで解説していますのでそちらをご覧ください。
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