今月のブログは、BLIB形式のスペクトルライブラリをMASCOTで検索する方法についてです。
今月の論文は、ショウジョウバエで発現させたPETプラスチックの分解酵素に関する研究です。
今月の小技は、英国本社の移転についてです。
Mascotニューズレターのバックナンバーはこのページ(英語版、日本語版)からご覧いただけます。ご一読の上、ご意見・ご質問等ございましたら、お気軽にお問い合わせください。
Mascot Serverでは、NIST MSP形式のスペクトルライブラリを作成・検索することができます。しかし、公開されているスペクトルライブラリはそれとは異なるBLIB形式ファイル形式を使用していることが多く、直接利用するための互換性がありません。BLIB形式を利用しているソフトウェアの例として、Skylineソフトウェアの一部であるBiblioSpecが挙げられます。
弊社では、BLIBをMSPファイルに変換するためのスクリプト「blib2msp」を作成しました。このスクリプトを利用すれば、Skyline(BiblioSpec)によって生成されたDDAライブラリだけでなく、Carafeのようなin silicoライブラリを生成するツールで作成されたライブラリもMASCOTで検索できます。
またこのスクリプトを利用すれば、Mascot Serverによって生成されたNIST MSP形式のファイルをBLIBに変換することも可能です。SkylineはすでにNIST(.MSP)ファイルを読み込むことができますが、MSPライブラリの内容をBLIB形式に変換し他のスペクトルライブラリ検索エンジンで利用できるため、内容比較などで役立ちます。活用することで複数の検索エンジンで全く同じ内容のライブラリに対して検索し内容を統合・比較する事ができます。
Rikako Sanuki, Hatsune Minami, Emi Kawano, Keita Katsuma, Toshiyuki Takano-Shimizu-Kouno, Shosuke Yoshida
Communications Sustainability volume 1, Article number: 36 (2026), doi:10.1038/s44458-026-00047-5
広く使用されているプラスチックであるポリエチレンテレフタレート(PET)のリサイクルは、通常多大なエネルギーを要する化学的処理に依存しています。これに対し、Piscinibacter sakaiensis 由来の酵素などに代表されるPET分解酵素(PET hydrolase:PETase)は、PETを生物学的にリサイクルするための有力な代替手段として提案されています。
著者らは昆虫をPET生分解のプラットフォームとして利用する可能性について検討しており、今回ショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)の腸管の一部および唾液腺にPETaseを発現するよう遺伝子改変を行いました。その結果、水溶性のPET共重合体および固体PETのいずれについても分解が可能であることを示しました。さらに、ショウジョウバエおよびヒト細胞で発現させたPETaseはいずれもグリコシル化されていることがわかりました。この修飾は酵素の触媒活性を低下させる一方で安定性を高め、より長期間にわたる持続的なPET加水分解を可能にすることが示されました。
N結合型グリコシル化の状況を解析するため、著者らは脱グリコシル化処理後のトリプシン消化ペプチドおよびキモトリプシン消化ペプチドについてLC–MS/MSを行いました。得られたスペクトルをMascot Serverで検索し、グリコシル化アスパラギン残基が酵素処理によってアスパラギン酸へと変換される際に生じる質量の変化を検出する事ができました。Asn-X-Ser/Thrモチーフ中の脱アミド化アスパラギン残基をN結合型グリコシル化部位とみなすことで、PETase配列中のN結合型グリコシル化部位を高い信頼性で同定するとともに、真核生物発現系において特定の残基が実際に修飾されていることを確認しています。
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